聖岳③ 2015 9/19・20

・・・林道が、崩れた。
上から下りてきたその男性の言うことには
昨日の午後2時半頃
易老渡の先で長さ25メートルくらいにわたって
道路の幅約1メートルを残して林道が崩れたというのだ。
聖平小屋で情報を聞いたのだという。
一応、仮設道路を作っているところらしい・・・
という情報は入っていたそう。
本当に絶句するしかなかった。
今日は下から人が上がってこないわけだ。。。
昨日から入れないんだから。
それにしても
便ケ島への林道は車一台通るのがやっとな部分がほとんどで
しかも横を流れる川の谷底まで
高いところでは30メートルはくだらないような場所もあった。
もしもそんなところが崩れていたら、2、3日でも復旧など難しいだろう。。
明日、仕事のあるルリコさんは
どうしようかしら。。。と不安の色を隠せない。
明日仕事はなくても後の三人も同じ状況。
下ってみなければ実際どんなことになっているのかわからない、
今日中には帰れないだろう。多分…

広げていたお昼ごはんを片付けて
情報をくれた男性にお礼を言って下山を始めた。
その途中で気がついた、
来る時便ケ島は携帯電話は圏外だったことに。
スマホの機内モードをオンにしていたことを思い出し
慌てて機内モードをオフにすると
しばらくして通知音がなった。
電波が入った、頼りないけど。
今、連絡できるところにしておかないと
連絡もなく帰宅予定日に帰らなければ遭難と思われてしまう。
電波は入ってもすぐに圏外になってしまうので
少し進んでは少しでも電波状態の良いところで
家人と登山部のタイチョーに
林道が崩れたらしく今日中には帰れないかもしれないと連絡を入れた。
タイチョーには、もしできればそちらでも情報を収集して
こちらの家族と連絡を取り合ってほしいとも伝えた。
今出来るのはとりあえずそれしかない。
皆、少し無口で黙々と長い下りを下っていた。
まだシルバーウィーク5連休の二日目だけど
自分も明後日には仕事に行かなければいけない。
憶測するしかない状況では
ここで何を話し合っても無駄なので
作業小屋が見えてきてゴンドラがある西沢渡あたりまで来るころには
なるようにしかならないとだんだん腹もすわってきた。

行く時に流されていた橋は
どなたかがとりあえず渡れるようには掛け直してくれていて
ゴンドラに揺られてロープを引っ張らなくても
簡単に川を渡ることができた。
小休止。


そしてまた
昨日よりもたくさんの胡桃の実が落ちている林道を歩き
御神木のような大きなカツラの木のところへ来たので
その木に向かって両手を合わせた。
・・・どうか無事に帰れますように・・・
何やってんの、とシゲシゲに言われたので
無事に帰れますようにって願掛けてんの、御神木みたいだから、
と笑って三人の後を追ったけれど
思い返せばこれが効いたのだと今でも私だけは思っている。
15:30 便ケ島
駐車場に止まっている車のフロントガラスのワイパーに紙が挟んであった。

早い時間に下山していた近くに車を停めていた人が
少し詳しい説明をしてくれて
仮設道路は今日の夕方には開通しそうだということを教えてくれた。
ほんとですか!!!
いちどきにいろんなことが頭の中をよぎったけれど
とりあえずヨカッタヨカッタと4人で言い合って
着替えたり荷物を片付けたりしながら開通を待っていると
本当に程なく開通したという知らせが入ってきた。
早速車を出して林道を下る。
易老渡を越えてしばらく行くと上がってくる車とすれ違った。
工事関係車両のようでウインドウ越しに
開通を知らせる紙を渡された。
駐車している車全部のフロントガラスに
またこの紙を貼り付けに行くのだろう。
おつかれさまです。

そして仮設道路の所へ来るとたくさん車が停まっていた。
安全を確認しながら一台ずつ通しているらしい。

ここでスマホの電波が繋がって
山中で連絡をしてからすぐに
タイチョーがLINEで下山対策グループを作って
いろいろと情報収集してくれていたことも知った。
この林道崩壊のニュースは長野や静岡では
登山者が孤立状態ということで
かなりのニュースとして取り上げられたらしくそのニュースまでも添付してくれていて
やはり大変な事だったのだということを改めて知った。

崩壊した様を間近に見るとかなりなもので
巻き込まれた車がなかったというのは本当に幸いだと思えた。
しかも崩れたのも仮設道路を作る事ができるような場所だったことも
不幸中の幸いというしか他に言葉も思いつかなかった。


・
・
・
林道は復旧作業を進めるのに
もう下からは車を入れる事なく
上に停めていた車だけを通してこのシーズンは終了したようだった。
高2の夏合宿の時のように
また最後の下山者となって聖岳山行は終わった。
最後に凄いオマケがついてしまったけれど
終わりよければ全て良し。
こうしてまた忘れられない山が増えていくんだな。

( おわり )
- 関連記事
スポンサーサイト