聖岳② 2015 9/19・20

16:00
聖平小屋のテン場はすでにもう
いい場所はほとんど埋まっていた。


イーズミサンが先行してくれてキープしてくれた場所は
一番奥の椹島への登山道の入り口近くだった。
とりあえずおつかれさまのビールで乾杯。
今日ここまでの疲れを労いながら明日の作戦会議。
薊畑からは聖岳往復になるので
朝イチでテントもたたんで薊畑にザックをデポして往復しようということに。
疲れた身体に染み渡るカレーの味。
明日は聖岳。

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実はちょうど二年前にも
聖岳の計画が立てられていた。
聖岳。
高校一年の登山部の合宿で登った初めての3000m級の山。
しかもそこに立てたのは合宿の五日目。
大きな大きな大きな山という印象しかなく
二年前の自分には、まだ山を本格的に再開してから日も浅く
テントの装備を担いで一泊で聖岳に行くなんて・・・
とても行ける気がしなかった。
今の私にはムリです
と、声をかけてもらっていたのにその時はお断りしていたのだ。
そして計画自体もルリコさんの体調などもあり
直前で聖岳から岳沢~奥穂高往復となり
奥穂なら…ということでそれには参加させてもらっていた。
それから丸二年。
多分時が満ちたのだろう。私はいま聖平小屋にいる。

9月20日(日)
3時起床。

いつものバウルーのホットサンドを食べたら
準備をして、まだ薄暗い中テントの撤収にかかる。
5時には出られる、と思ったところにトラップが。。。
出発前に最後のトイレを、と向かったらトイレに大行列。
シルバーウィーク恐るべし、
20分ほど行列に並びやっと出発。


振り返る聖平。さようなら。



昨日は見えなかった上河内岳や向こうの山並みも。
よく見るとほんのりと秋の色に染まり始めている。


さてザックをデポして
必要な物はシゲシゲのサブザックに入れてもらい、私は空身で・・・
(多分こんな贅沢なことは後にも先にも無いということは十分自覚)

九月の下旬だけどまだ蒼いばかりの山並みの向こうには
雲の峰が険しい頂を連ねていた。




やがて小聖の肩で樹林帯を飛び出すと
目の前に壁のような聖岳が聳えていた。


雲は
谷間をすり抜けてゆるやかに流れ込んでくる。
それが不思議な感覚だった。
山々をそおっと覆う雲ではなく
這うようにあちら側から進んでくる。
山の襞を、谷の隙間を縫うように。
満たすように。



そして富士山が。

北岳山荘前から見る富士山が
これまでの中で一番と思ってきたけれど
この時の富士山ほど神々しくて
言葉にならないような美しい富士山を初めて見たかもしれない、
ナンダココハ。。。
そして小聖岳。
見上げる聖岳の大きさは半端なく
さらに覚悟を決めなければ登れないような
そんな大きさの山だった










7:50
聖岳山頂。
高校一年の夏合宿以来
遥かな遠い時間を経て
またこの山の頂に立てた。



94座目の山で
ルリコさんはとてもにこやかに
イーズミサンと二人で写真に納まっている。
ああ素敵だなぁ。。。

目の前に広がる赤石岳と
兎岳から中盛丸山、大沢岳から赤石への稜線は
あの時と同じだった。あの高校一年生の時に見た風景と。
みどりのやまやまは今また自分の目の前にある。目の前に。。。
こみ上げるものに鼻の奥がツンと痛くなったけれど
深く深く息を吸ってそれをやり過ごした。


小聖へ戻る途中にはブロッケンも現れて私たちを歓迎してくれた。







無事に薊畑まで戻り便ケ島を目指す。



無事に聖岳の山頂を踏んで
少しだけどやり遂げた感を抱えて深い苔の森を下る。
山頂から駐車場までは2000m以上の下りが待っているけれど
あれだけ苦しかった登りも
下りとなれば足取りはかなり軽い。


1800mの表示の小さな広場のようになっている
場所まで下りお昼ごはん。
「今日は下から上がってくる人いないね」
「シルバーウィークも一日ずらすとこんな感じなのかなぁ」
そんなことを話しながら食後のコーヒーを飲んでいると
上から下りてきた人に言われた。
「便ケ島に車停めてるの?昨日易老渡の先で林道が崩れたらしいよ。」
・・・えっ?!林道が崩れた?!
( つづく )
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