両俣から北岳 ① 2013 8/17~19

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もう二年も前の話しになる。
高校二年の夏合宿、両俣で台風10号に遭遇して登れなかった北岳。
それから遥か長い年月を経て
この前年にシゲシゲとタイチョーと3人で
念願だった北岳の山頂を踏むことはできた。
でももう一つ心の底に貼り付いている宿題を片付けなくちゃ・・・
両俣へ行かなくちゃ。
漠然と考えていたけれど
それならちょうどこの年、高校二年になったムスコも連れて行こうかな。。。
別に行ってもいいけどー
高校生男子のあまり高くないテンションながら
イヤと言われなかったのをいいことに一気に計画は進み
両俣小屋つながりで知り合ったcaffe neroさんで
ムスコ用にザックを購入したり(結局それは今は私がメインで使ってるけど)
両俣小屋の星さんの様子を聞いたりして
その日を迎えた。
当時の自分と同じ年齢になった彼は何か感じてくれるのかな。
・・・・二年前の話だけど。いまここで。
2013年 8月17日 両俣小屋へ
一週間前くらいから天気予報とにらめっこして出発日を決定。
始発電車に乗って
八王子駅から松本行きの鈍行で甲府まで。
あくまでゼイタクさせない主義(笑)
甲府駅に着く頃までの間には
自分の中の多少の不安も
(何かあっても山については初心者と変わらないムスコには頼れない…
ほぼソロで行くのと変わらない決断力が必要とあって結構緊張していた)
半分諦めというか観念して、というか
そんな気持ちに昇華して甲府駅のバスターミナルへ。
バスは増発され何とか座れて広河原へつくと
北沢峠行きのバスも臨時便が出るという。
これで両俣小屋へも14時までには着けるな…
15時を回って小屋に着くと星さんに怒られるからなぁとちょっとだけ安堵。
・・・なぜ15時を回って到着すると怒られるのか。
北アルプスなどでは小屋の人に怒られるなんて考えられないことかもしれないけど
早出早着きは登山者の鉄則。
それが一番であり、ただでさえどこへ上がるにも行程の長い両俣で
登山者の安全を願っての星さんの愛情なのだ。
北沢峠行きのバスを野呂川出合で途中下車。
ここからはひたすら林道をテクテク歩く。
うん十年前、台風の雨の中を両俣から歩いてきた林道は
もちろん何も景色など見えず
ただ黙々と足元だけ見ながら歩いていたけれど
今日のこのお天気、青い空と眩しい日差しの下、カーブを曲がるごとに次々と違う景色が見えてきて
暑いけれど足取りも軽い。
裏から見る北岳や
ちらっと見える真っ白な甲斐駒ケ岳
ここを歩かないと滅多に見られない景色を眺めながら
てくてく、てくてく。

林道の終点、川沿いに付けられた道も
もちろん昔の面影なんかはなくて
明るくて気持ち良い道が小屋へといざなってくれる。
見えたよ、あれが両俣小屋だよ。

テン場を抜けて、ヤナギラン咲く小屋の前。
登山者と小屋の前のベンチでお話中だったところ本当は申し訳なかったのだけど後ろから声をかけた。
星さんですか?
ん? とこちらを振り返ってくれた星さんに
「41人の嵐の時にテン場でテントを張っていた小平高校の生徒でした!」
そう一気に言うと星さんは
ああっ!と立ち上がって私の手を取ってくれた。
「まあー、よく来てくれたねー…」
あの時はありがとうございました。。。
caffe neroのオーナーから私の話を聞いていたので
すぐに結びついてくれたようで
よく来たよく来た、と小屋の中へ通された。
これを・・・と、担いできた焼酎「富乃宝山」を渡すと
なんでこれ好きなの知ってんの?!
と驚かれたけれど、大武さん(caffe neroのオーナー)から聞いてますから
というと嬉しそうに受けとってくれた。
「一息ついたら昔のテン場を案内するよ」
夕食の支度までの星さんにとってはゆっくりできる貴重な時間だったけど
星さんを先頭に小屋の上流の昔のテン場へ向かう。

確か当時
小屋からテン場まではほぼ平で
おぼろげながらかなり広々とした感じ、
イメージ的には砂浜の脇に広がる松林のような下草があまり生えてない森の中のような。。。
だけど歩いて行くと
右手の山側から押し出された土砂が丘のようになって間には小さな流れが、それをいくつも越えていく感じ。

小平高校がテント張ってたのはこの辺だよ。
平らな場所などどこにもない。
小山のようになって、木々や苔むした岩に
この地に流れた静かな年月だけを感じる場所。
そしてその奥の野呂川越へ上がる分岐にある、ここだけは流されなかったんだという山ノ神。
ああ、あれから遥かな年月を経たけど両俣へ来たんだ。
ジワジワと実感が込み上げてきた。

( つづく )
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