「41人の嵐」Ⅱ 高校二年の夏合宿②最後の下山者

しまこ




雨降る林道を延々と歩く。




DSC06791_convert_20150107075729.jpg
(野呂川出合方向から両俣方向を望む   2013)





当時はエントラントの雨具だった。


さすがに2年になったのでキスリングではなく
バイトして買った赤いカリマーのザックを背負い

赤いキャラバンシューズではなく
これまたバイトして買ったかお年玉で買ったかの
ガリビエールのスーパーガイドを履いて
足元だけ見て歩いていた。




カーブを曲がっても曲がっても
永遠に続くのではないかと思われる林道。


雨で真っ白の、いや、あの時は白くはなかった。
灰色の景色。
 

途中で立ったまま一本をとったりしていたかな。
でも、普通の雨降り、くらいな気持ちで歩いていたので
差し迫った危機感は無くただ歩いていた。あの時は。



この時顧問T先生は林道の崖がいつ崩れるのではないかと
ヒヤヒヤしながら林道の斜面を見上げ歩いていたと後から聞いた。
気が気ではなかったと。


広河原まで何時間くらい歩いただろうか。

地図のコースタイムを見ても
4時間はかからないくらい、なので多分4時間前後だろうけど
とにかく広河原へは着いた。
( 星さんによると私たちが両俣を出発したのは10時半、広河原に着いたのは15時だったそうだ。
…そうだ。
というのはこの翌年の夏、
顧問は個人的に両俣へ星さんを訪ねており、その時に当時の話をした、ということだった。)





広河原に登山者の姿はなく、タクシーが一台だけ。
そのタクシーも連絡をもらったお客さんを待っているところだったが来ないという。

交渉の末、女性顧問M先生と私も含まれた4人がそのタクシーに乗せられて広河原を後にした。




DSC06777_convert_20150107075654.jpg
(広河原  2013)





残った顧問T先生と部員は、タクシーからマイクロバスを手配してもらい
バスが来るまで広河原の屋根のある待合所のような所で
着替えたり荷物の整理をしていたらしい。


顧問T先生はその時、
最悪、屋根のあるここでテントを張って
台風をやり過ごせばいいと思っていたらしいが・・・

台風10号が過ぎ去ってみれば
その場所は土砂に埋め尽くされて跡形も無くなっていたという。





これを書いている今でも
もしあの時…と思うと胃の腑をギュッと掴まれる感じがする。





先発のタクシーが着いた夕方の甲府駅は
本当に台風なんか来ているのか、というくらいの小雨だった。
駅前を歩く人たちは至ってふつう。

ボロボロでよれよれの私たちは街の中ではとても浮いていたのを覚えている。

そして待つことどのくらいだっただろうか…。
確か周りも暗くなり始めた頃
甲府駅のロータリーにマイクロバスは着いた。

全員無事。

私たち某高校登山部は広河原からの最後の下山者となった。



そして
甲府駅から鈍行の高尾行きか新宿行きか忘れたけど
あの青とクリーム色の電車に乗って自宅へ向かう。

こうして夏合宿は終わっていった。




DSC06819_convert_20150107075828.jpg
(あの時の残骸だよ・・ 星さんに言われて足元を見ると埋まって道の一部になっていた誰かのザック   2013)





最寄りの駅から家まで雨の中どうやって帰ったかも覚えていないけれど、
覚えているのは
その日は泥のように眠って、翌日目を覚ましたのがもうお昼をまわっていたこと。

そして中央本線も台風による土砂崩れのため
私たちが通った後、夜半には不通になっていた。




DSC06835_convert_20150106065531.jpg
(凛として一輪だけ  両俣にて  2013)






( つづく )










関連記事
スポンサーサイト



Posted byしまこ

Comments 2

There are no comments yet.
sho
悪魔の囁きと天使の微笑みと・・・

山はこうして、たびたび、人間を試してくる。
山登りで100%の安全はない・・・
100%の安全を求めるのなら山登りはやるべきではない。
なんて誰かがこれに近いことを言っていたような。
山に入るってことはそういうことなのだと常々そう思う。
単独行ならなおさらひしひしと。
山ではロシアンルーレットを続けている様なもの・・・

でもそれ以上に素晴らしいものを与えてくれるのも山。


しまちゃん今更ながらお疲れさま!
そして、素晴らしい先達に恵まれたこと・・・
しまちゃんを形成する山の経験・・・
全て偏にしまちゃんの人徳だろうね。

なんてあまりの体験談なのに・・・
こんなことしかコメント出来ない自分が・・・
試されているのか!

しまこ
悪魔に囁かれても神様が導いてくれるから・・

師匠、
こんなコメントし辛い記事にコメントいただいてかなり恐縮^^

41人の嵐も読んでもらってるし、
その裏でそんなことがあったんだ、ヘェ~
って読んでもらえればもう充分。


悪魔の囁きと天使の微笑み、というか、飴とムチ、というか…

100%の安全がない山を歩くのに
私が目指しているのは自立した登山者になること。


基本的にソロで歩かない私は
単独行の登山者を尊敬しています。

計画から実行までたった一人で
歩き出してもたった一人で全部判断下さなければいけないんですから。

仲間がいれば頼ってしまうし、自分で出来ることさえ依存してしまう。
なかなか難しいけど、
自立した登山者として仲間と歩けたらいいなぁ、って思うんですよ。




なんか話が逸れちゃったけど。



私がこの合宿、この台風で経験したことなんて
世の中のことから見ればほんの些細なちっぽけなこと。 多分。

私を形成する山の経験とて
それは山を愛して山を歩いている師匠や
他の皆さんと何にも変わりませんよ。
人徳なんてとんでもない(笑)

ただひとつだけ言えることは
まわりの「ヒト」には恵まれたかな。 それは今でも。


山に対する今の思いは

「41人の嵐」Ⅲ

の最後の方のコメントがすべてだからそちらも読んで下さいね。よかったら^^


怖い思いをすることもあるけど
それを差し引いても
有り余るものを山から貰っているから
私はシアワセモノなんでしょうね、きっと。