白馬岳・雪倉岳・朝日岳 2016 9/23~25 ⑨

エピローグ。
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木道の終わりが近づいてくる。
そこが終わってしまえば
あとは樹林帯の下りとなって
沢まで下りきってしまうと、そこからさらには
蓮華温泉まで300メートルの登り返しが待つというなかなか厳しい道が。

それをわかって
最後の色彩を愛おしむように
何度もなんども、
なんどもなんども振り返る。









AM 11 : 30
森の中からいきなり開けて
そこが白高地沢の出合いだった。



照りつける日差しが強くて
沢の流れは清冽だった。
橋を渡った日陰で大休止。
よく歩いたなー。



橋を渡ってすぐに登りになるのかと思っていたら
しばらくはゆるやかに登り下りを繰り返して
どちらかといえばさらに下る道が続いている。
もう少しだからがんばって。
笑顔の葉っぱに元気づけられて
こちらも笑顔になってまた前に進む。


ふたつめの沢を渡ると
今度はどうやら本格的な登りの道が続くようになる。
今日のここまでの疲れと
山に入って3日めの疲れと
ダブルパンチで身体に足にダメージはきてるけれど
また休憩してしまったら
もう立てなくなるんじゃないかと思って
どんなにゆっくりでも少しずつでも前に進もうと
ゆっくりゆっくり小さくても一歩ずつ
止まらずに歩こうとストックと足を前に出し続けた。
この上には木道の続く湿原があるから…
そう聞いていたのでなんとかそこまでと思いながら足を進めていると
咲き残ったリュウキンカが一輪。
水辺に咲く花…
もしかして兵馬の平までもう近くなのかな。


兵馬の平。
きつい登りはこれでおしまい。
蓮華温泉まであと一時間の表示にほっとするやら、
本当に終わりが見えてしまったことにがっかりする気持ちやらを
木道に腰掛けて休憩しながらクールダウンしながら
頭の整理もしなくっちゃ。
もう本当に山旅が終わる。



緩やかに続く苔むした木道。
開けた場所から振り返ると
朝日岳から下りてきた紅葉の尾根は
山の時間はおしまいだよ、というように雲に隠れて
もうあの色彩は記憶の中で輝くだけ。




PM 2 :20
蓮華温泉にもどってきた。



明治の頃
ウォルター・ウエストンもやってきたという温泉につかり
この三日間の汗と疲れをさっぱり流して。



ふと窓の外を見ると
二日前に白く煙る雨の中見た
「白馬岳」の指導標。。。
歩いてきたんだなあ。
雨の蓮華温泉に始まった山旅。
白い景色の中を白馬岳まで歩いたことも
たった二日前なのにもうずっと昔のような気がして
「白馬岳」 の文字をながめている。
いつか歩きたいと願っていた三国峠からの道を
歩いてきたんだという実感もまだ湧かなかったけれど
山の景色とそこに流れる時間に浸り
ただ山の空気を吸って山の一部になって
ただただ歩き
雪倉岳も朝日岳も
その大きくて豊かな山の懐を歩けただけで
しかも山そのものが彩りで装うこの季節に
その輝きを見ながら歩けたこと
それだけでもう
十分すぎるくらいに満たされた山旅だった。

帰り道
蓮華温泉から下っていくと
雨飾山がそのきれいな姿を見せてくれた。
あのとき雨で何も見えなかったけれど
今日はこうして見送ってくれている。
この山旅の終わる寂しさを紛らわしてくれるみたいに。
やっぱり私はまた
ただ山に浸りたくて
山に帰ってきてしまうんだろうな。
国道に出るまで、手前の山が雨飾山の山頂を隠して
その姿が見えなくなるまで眺めながら
そんなことを思っていた。
( おわり )
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