白馬岳・雪倉岳・朝日岳 2016 9/23~25 ⑧

山にいる喜びを。
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いい景色だったところは必ず振り返らないとね…
と誰かが言っていた。
そのためにあるようなベンチに腰掛けて
朝日岳からの歩いてきた道も
青く広がってきた空も
雪倉岳から清水岳への奥行きを見せる山並みも
黄色や紅に染まり始めた山肌も
どこを見てもため息しか出ないような
秋の山の中にいる喜び。





こんなに素敵な道なのに
誰も歩く人のいない貸切の山を歩けるしあわせ。
相変わらず10歩歩いては立ち止まり振り返り
なんとかこの景色をこのまま持って帰れないものかと
カメラをあちこちに向けてみるものの
ファインダーから目を外すと
やはりそれは無理なんだ…と




樹林帯に入る手前で後ろから来た方と言葉を交わす。
綺麗ですね~…
足が進みませんね…
・・・・・
このペースで歩いていて本当に大丈夫なのかな…
そろそろそんなことさえ思ってしまう。
でもこの景色の中では
これ以上ペースを上げて歩けないのもわかっているんだけど。





尾根を乗り越えるように
しばし樹林帯を進んで行くと
そこは五輪の森だった。


この先にまた素敵な場所があるよ。
そう聞いていた五輪の森を抜けると…
紅葉の尾根の向こうに見える
ゆるやかで大きな朝日岳の姿が。


そして行く手には
雨飾山を正面に
蒼く連なる鋸岳から妙高火打の山並みが開けて
雪倉岳はもう谷を挟んでその裾野から
山頂へと突き上げる姿を見せて目の前にあった。



やっぱり言葉も出なくて
ただそこに立っているだけ。
本当はもっともっと
この感激を素直に表現できればいいのに、と
思い返してつくづく残念な自分がいる。


でも、よくわかったんだ。
山を通して感じるものは
たとえそれを表現できなくても
ぜんぶ自分の中に受け入れて
自分で噛みしめればいいんだ。
だから私は山へ来ると空っぽになって
何も考えずにただ歩くだけなんだってことが。

そしてまた
どこまでも続く木道の向こうに
池塘とベンチの庭園のような場所が。
思わず駆け出してしまいたくなる景色だった。



蓮華温泉から上がってきた人と入れ違うように。
まだまだ先は長いので
鱒の寿司とゼリーで小休止。
笹の香りのする鱒の寿司を口に入れ
やわらかい秋の風にこの風景と色も一緒にかみしめる。



なんども何度も振り返る。




歩くたびに
この山旅の終わりも
そろそろ近くなっていることもわかっている。



花園三角点まで来てしまった。
この先のカモシカ坂からは樹林帯の下りが待っている。
( つづく )
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