白馬岳・雪倉岳・朝日岳  2016 9/23~25 ②

しまこ




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白い世界。









AM 10:15

ひと月前チングルマの果穂が揺れていた大池は
今度は葉が紅く色づいてまた違った風景を見せていた。
もう紅というより
バーガンディに近い深い色に。




















もうひとつひと月前と違うのは
…誰もいない。テン場も道も。





















今日は平日。しかもこんなお天気。

それでも白馬大池山荘の食堂は
栂池から来た人、白馬岳から下ってきた人、そして蓮華温泉から上がってきた人が交差して
雨宿りしながら暖かい食事をとったりして
その顔は皆ほっとした笑顔だった。






温かいスープと持参のパンで軽くおなかを満たし
さて、この先は雨の稜線…
今のところ雨も小雨程度、風も吹いていない。

ここまでは秋の冷たい雨に震えて歩くということもなかったし
天気予報もこれ以上悪くなる感じでもない。
でも稜線に出れば否応無しに条件は悪くなる。
そうなった時にその場でどうにかするのもツライし
ここで雨具のズボンと手袋をつけて…


さあ白馬まで。






先月みんなで
ヘッドランプをつけながら
夜の終わりを黙々と歩いた道は
ああこんな風景、こんな色になっているんだね。


なんとなくガスが上がりそうな、でもそんな都合よく
ご褒美のようにお日様が出てきてくれるわけでもなく
少しずつ色づきの濃くなる足元を見ながら歩いて行くと
















ひょっこり道に出てきた雷鳥さんとこんにちは。


そうだここは雷鳥坂。
地図にも雷鳥多いと書いてあるけれど
この場所で出会ったのは初めてだ。





道案内してくれるように登山道を歩くその後をついていくと
4羽の雷鳥はみなもう足とお腹は真っ白の冬毛。
ブルブルっと羽を広げたその羽ももう真っ白になっていて
短い夏が過ぎていったことを教えてくれた。






船越の頭。

ん、なんか先月の帰り道も真っ白な
同じ写真を撮った記憶が。











行く先々に雷鳥さん。
たいてい5羽、6羽と団体さんで歩いている。

周りに見る景色もないので
雷鳥が現れるとそこでひと息。
こんなにたくさんの雷鳥に出会ったのは初めてなので
景色が無くてもそれはそれで嬉しかったりする。











PM 1:00 小蓮華山

小雨は普通の雨になり
さすがにこのあたりになると少しだけ風も吹く。

大池までは感じなかったけれど
手袋をする指先もさすがにかじかんで冷たさがつらい。





行動食でおなかを満たして
温かいお茶をもらって生き返る山頂。

濡れた手袋を取り替えたらかなり元気が出た。
もうここまでくれば白馬までの先行きも見当がつく。






道中は同じ頃に白馬大池を出た 
数えるくらいの人たちと抜きつ抜かれつ。

こんな日にここを歩いているというだけでなんとなく湧く親近感。


この頃になるとその人たちが
遠くからでも「雷鳥がいるよ」と手ぶりで教えてくれたりする。
最後に出会った団体さんは
数えると10羽以上もいて飛んだり鳴いたり
ちょっとその有り難さがなくなるくらいの…(笑)

でも多分
こんな光景に出逢えるなんて
そうあることじゃないよね。





ここまでに延べ30羽以上・・・
最後の雷鳥の団体さんに会ったあとは
登りのきつい道ではないこともあって
先月歩いたペースが戻って快調に歩く。

と、これを越えれば三国峠、というコルのようなところで
前を歩いていたグループが立ち止まっていた。

ほとんどホワイトアウトの状態に
初めてこの道を歩くらしいそのグループの人たちに
ここ三国峠ですかね?と声をかけられた。

三国峠はもう少し先ですよ、指導標もありますから。

と答えると、ありがとう、こっちでいいんですよね、と確認して出発していった。



初めて歩く道でこの天気で不安な気持ちはわかりすぎるくらいよく分かる。
ここがどれだけ素晴らしい場所か
教えてあげたいけれどそれも出来ないもどかしさ。

よくよく見渡せば本当に真っ白で
二年前に三国峠を過ぎたところで道を見失いそうになった自分を思い出す。

何年か前のGWの大量遭難も
 多分この先の二重山稜あたりではなかったかな、
そんな話もしながら
あの時は残雪で踏み跡も見つけられずだったけれど
稜線の広いこの辺りではホワイトアウトになると
本当に怖い事だと思いながら進んでいくと
やがて三国峠に出た。









雪倉岳
明日は向こうへ。

明日にはきっと晴れるはず。






もう直ぐだと思いながらの
山頂までの道のりの遠いこと。


昨日からほとんど寝ずにここまで
3000メートル近くまで登ってくるのはさすがにつらい。
はあっ、はあっ、とひと息ひと息ゆっくりでないともう進めない状態だったけれど
PM 2:55
静かな山頂にたどり着いた。





景色のない今日は
山頂を素通りして山荘へ。

















PM 3:00
白馬山荘。


受付に入るとストーブの火。
手袋をはずし、かじかんだ指先をかざすと

あゝこちらの世界に戻ってきた… 

冷え切った指先にじんわりと血が通う感覚。











ここは3000メートル近い山の上、
遮るものなく雨に濡れ風にも吹かれれば
すぐに低体温症にもなる厳しい世界。

今日はひどい雨にもならず暴風にさらされたわけでもなく
それだけでも天に感謝しなければいけないかもしれない。


すぐそこにはもう冬が待ち構えている9月の北アルプス。



そんな秋の山。





(   つづく   )





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Posted byしまこ

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