高校登山部のはなし 1年生の夏合宿④ 終わりの始まり

しまこ





歩いても歩いても南アルプス


歩きに歩いて下山の日。



その日は朝一で千枚岳へ。
千枚岳の山頂でみんなでバンザイをして写真に収まり、あとは長い長い樹林帯の道へ。

最後のピーク千枚岳で撮った写真は全員が
この大きな山山を歩いてきた
満足感や達成感と自信にあふれた満面の笑み。
手元に無いのが残念だけど、
その写真だけはとてもはっきりと覚えている。

当時は実感みたいなものも大して無かったけれど
この一週間山の中を重い荷物を背負って歩いたことのスゴさは
年月を経てからじわりじわりと・・しかも周りに言われて実感するという不思議さ。

どれだけ貴重な体験だったのか
今ならわかるけど。





畑薙ダムから帰りのバスにゆられる。
しばらく走って
通路側の席から前後を見ると
ほぼ全員が首を垂れ深い眠りの中。
南アルプスの南部を歩く事ってそういうことなんだなあ。
他の山も歩いてきた今、つくづく思う。
大きくて深くて、おおきくて、おおきくて・・・・・



静岡から鈍行列車に揺られて東京へ。
長かった合宿も本当に終わる。

…次は終点東京デス

の車内アナウンスに降りる用意をするんだけど、
ぐっすりと寝込んだOBのT先輩、
先輩、着きますよ!
と揺すっても起きない。
そしたら誰かが叫んだ

起床!!!

の一言に、ガバっ!!と起きて周りは大爆笑。

テントでの眠りから覚める
朝イチの部長の
起床!の声が今でも耳に残っている。




キスリングを背負って
タオルを首にぶら下げて
ニッカボッカーをはいて
赤いキャラバンシューズで歩いた
南アルプス南部の山山。

こうして高一の夏合宿は終わったけれど、
これは今に続く自分の山への思いの始まりだったんだ。
すべてのはじまり。



この次の年
高二の夏合宿は南アルプス北部へ行くことになるんだけど、
まさかあんな結末になるとはもちろん知る由も無い。
その時に遭遇した台風の話は
両俣小屋の小屋番、星さんが
「41人の嵐」として本を書かれている。
いつかその話も書けるかな。

そして、
その時から私が北岳にこだわって抱えてきた思いは
それから○十年を経て、
2年前の夏にその想いを遂げることができた。
こんなことがあるんだ、と思いながら。




願わくば今、
一つ望みを叶えてあげると言われたら
あの、
高一の夏に歩いたコースをもう一度歩いて、
あの時の光景をも一度しっかり目に焼き付けたいな。


どんな花が咲いていたのか
あの時の自分に教えてあげて

周りの山々はどんなふうに見えていたのか
何も知らなかったあの時の自分に山座同定してあげて

みどりのやまやまはどれだけ大きくてみどりだったのか
今の自分に教えてあげるために。




( おわり )




これだけ手元に残っていた当時のアルペンガイドと地図。ぼろぼろ。

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Posted byしまこ

Comments 2

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azuwasa
続編も期待してますよ!

無事の下山、おつかれさまでした。

このシリーズ、とても素敵ですね。
(いまの山の記録も、もちろん素敵ですけど)

瑞々しさや初々しさや、なんだかちょっと甘酸っぱい切なさにあふれていて、読んでいて胸がキュッとします。
こんな、○十年経っても色あせない思いが詰まった山があるなんてうらやましい。

キスリングやニッカポッカや、手のひらを米に押し付けて飯盒の水量を計ったりなんていうのが、とても新鮮......ではなく、なつかしかったです笑
ひさしぶりにカニ族という言葉を思い出しました。

この先も、高2の夏合宿や、冬合宿もあるのかな?
そんな記録もいつか読んでみたいと思っています。

  • 2014/12/08 (Mon) 18:16
  • REPLY
しまこ
続編制作決定 !?



わ、わ、あずわささん!
こちらにコメント残していただいてちょっと、いえ、かなり感激^ ^


おかげさまで無事に下山できました(笑)


今まで歩いてきた山の記憶を残しておきたいと思って書き始め
特に高校時代の話は写真をアップするわけでもなく
ほとんど独り言のように思いついた(思い出した)ことだけ
脈絡もなくタラタラと書いてきてるので


> 瑞々しさや初々しさや、なんだかちょっと甘酸っぱい切なさにあふれていて、読んでいて胸がキュッとします。

そんな風に読んでもらえてるなんて
もう、こちらの方が胸がいっぱいになります。

あ、私、本当はコメント引用してお返事するのきらいなんですけど
あまりに素敵なコメントだったので思わずそのまま使わせていただきますね^ ^


初体験があまりにも強烈すぎて(笑)
結局ずっとそれを引きずり続けているんですね~私は。
それが良かったのか悪かったかは多分一生わからないけど
それでもまた、今もこうして山を歩けて、
あずわささんや山を愛する人達とこうして繋がれて好きな山の話ができる、
ってそれだけで、うん、良かったなあーってしみじみ思います。


あずわささんもキスリング世代ですね、きっと(笑)
機会があったらゆっくりお話ししてみたいな~
あの頃の不便さ(当時は不便と思わなかったけど)からみると、今の状況は夢みたいですよね。
まあ、そのおかげで歳を重ねた今でも楽しめてるわけですけど^ ^


この先は
北八ヶ岳マイナス20度の春合宿とか
広河原から命からがら最後の脱出・高2の夏合宿とか(笑)
製作決定してもいつ公開になるかは分かりませんが
またおヒマなときには遊びに来てくださいね~

以前いただいた
高校夏合宿シリーズ楽しみにしてます
の一言でなんとかここまで完結できました。本当にありがとございます^ ^

  • 2014/12/09 (Tue) 08:44
  • REPLY