雨飾山  2016 7/9  ②

しまこ







雨の山が見せてくれたもの。








荒菅沢を渡るとそこからもかなりの急登が待っていた。

幸いなことに
見るからに滑りそうな色の土は
実はそんなにツルツル滑らなくて
この雨の中では比較的登りやすいと思われるような道だった。









高度を上げると木々の切れ間から
布団菱と呼ばれる岩場が見えたりもする。



雨は一時的に弱まったりを繰り返し
向こうの山肌がたまに見え隠れして
もしかしたらこのまま止んでくれるのでは…

と淡い期待も少しだけ持ちながら進んでいく。





すぐにそれは淡すぎる期待だとわかるのだけど
この上へ出てしまうと樹林帯がなくなりそうなところで
雨具のズボンを履くために小休止。

雨になりここまでゆっくりと休憩もできず
持っていたパンを分け合ってさらに先へ。






岩がちの少し痩せ気味の尾根になると
周りが開けて気分も明るくなる。















雨は相変わらずだけど
それ以上強くなるわけでも
風が吹きつけてくるわけでもなく
そんな中に少しずつパッと目を引く色があらわれてくる。


花たちだ。















雨でカメラもずぶ濡れで
いつまでレンズが持つかわからないけれど
帰りにまた撮れるとも限らないので
その可愛らしい花たちに挨拶するように
立ち止まりカメラを向ける。







いくつかハシゴを越えて
なんとなく傾斜が緩やかになってきたなと思った所が笹平だった。

ゆるやかなアップダウンと笹の道。





















ミルク色の視界に流れるガス。


マルバダケブキの黄色や
ウツボグサの紫色が鮮やかに浮かび上がり
オオバギボウシの花に宿る露が綺麗だったり
よくよく見渡せば一面のお花畑の中だった。


























ひとしきり進むと
最後の登りが待っている。


ここでもたくさんの花たちが
足を岩にかけるたびにぽっ、と白い中から浮かび上がってきて
見つけるたびに足を止めてしまう。




























道の脇にはウスユキソウも。




途中で抜かされ先行した3人組のお兄さんたちが
下りてくるところで道を譲り
もうすぐ山頂ですよ、と教えてくれた。


その言葉通りひとしきり平になって向こうに
山頂標識らしく棒がぼんやりと白く煙る中に浮かんでいる。






真っ白だけどわくわくしている。


双耳峰の山頂の北峰の手前に出たので
石仏がいくつか並ぶそちらに先に足を向ける。




















来ましたね!



雨が降る中をここまで来た。

谷から吹き上げる風は覚悟していたほどは冷たくなくて
なんかとても清々した気分だった。




景色はないけれど
雨降る雨飾山に今来ている、というだけで
なんとなく誇らしい、今まで味わったことのないこの充足感。










そして北アルプスらしい
黄色いプレートの山頂標識のある南峰へ。

後から来た方たちも
雨の中だけど嬉しそうだ。





「雨飾山」の雨の字と山の字が
まるで涙で滲んだように崩れている。





さすがにこの雨では山頂デザートも無理なので
下ることにしましょうか。




山頂から見えるはずの乙女の横顔も
今日は白いスカーフに覆われて
残念ながら見ることは出来なかった。


また来てね、今度は晴れた日に。


そう言われている気がした。






いよいよ本降りになる雨の中を
遮るものなく雨に打たれながら
来た道をまた歩いていくと
なんだろう…
今まで感じたことのない…
なんだかやけに楽しくなってきて。





開けた場所から少し樹林帯に入って
行きに雨具のズボンを履いた場所で
立ったままおにぎりを食べた。



雨の中立ったまま…

想像するとかなり悲しい光景のように思えるけど
実はそうではなくて
それさえも楽しくて
おにぎりが本当に美味しかった。




荒菅沢への下りの道は
もう雨が小川になって流れている。


晴れた日にしか山に行かないとわからないけれど
こんな光景が山の中では当たり前に
繰り返されていることを改めて刻んで。















雨の山で
雨粒に打たれながら
自分も岩や木や葉っぱになったつもりで歩く。


濡れた緑はこれ以上なく生き生きとして
嬉しそうにさえ見えてくる。

うきうき…雨喜雨喜…。





















ブナ平へ着くと
ほっとする気持ちと
ああもうじき雨飾山が終わっちゃう…
胸の奥をギュっと掴まれるような
せつない気持ちに襲われる。


山の帰り道はいつもそうだ。







最後の下りは特に慎重に。




沢の音が近くに聞こえてくると2/11の標識へ
ひょっこりと出た。





行って来たんだなぁ…
水たまりがもう浸水しそうな木道を沁みじみ歩く。


と、
ツルっ、ツルっ、
右足左足の順番に足が浮いた。

そして、ドン、とお尻で着地。


突然のことに自分でも
何が起きたかわからないまま
木道にお座りしていて笑えてしまった。



写真なんか撮られてるし…^^









おつかれさまでした。




休憩舎で全身ずぶ濡れから解放されて飲む
温かい珈琲の美味しさとありがたさは
山頂で飲む珈琲とは違って
無事に戻れたことを静かにかみしめながら
今まで味わったことのない沁みていく一杯だった。












雨の雨飾山。



多分もう雨の日に来ることはない一期一会の山。

ほとんどすれ違う人もなく
そこにいた人の心にだけ
刻み込まれる白い景色と雨の匂い。

どんなに青空の下の晴れた山より
深く深く心に刻みつけられた山。



こんな山はもう歩けないだろう・・・
でもまた恋しくて思い出してしまう山なんだろうな、きっと、今日の雨飾山を。







(  おわり  )




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Posted byしまこ

Comments 2

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tahara_t2
おっ イイネ!!

腕が上がったのかカメラが良くなったのか、それとも両方。??

「一期一会の山」を良く表現している。

一枚一枚どれを見ても見飽きない。

この雨の中カメラを出し続けた価値がある。 イイネ!!

最後の帽子の写真はこの時の気持ちがにじみ出ている様でとても良い。(^^♪



いつも見ています。

更新ガンバレ。(^_^)v

  • 2016/07/28 (Thu) 21:07
  • REPLY
しまこ
イイね! もらえちゃった♪

カメラはいつものコンデジだし
腕も上がらず進歩なしですけど
イイね!ありがとうございます(^^)


見飽きないですか?

それは多分、
こんな雨の日に…わざわざ選んで…
山に入って写真を撮るもの好きな人なんて
ほとんどいないから…(笑)
雨の山の写真が珍しいんじゃないですか。

カメラは防水仕様じゃないし
カメラを拭く手ぬぐいさえ水も滴る…
レンズ曇って臨場感半端ないでしょ(^_-)


歩き出しはほんの小雨
このまま止まないかな〜なんて
かすかに期待してたんですけど
甘い甘い。。。
樹林帯を出る頃には普通の降りになってきて
下山の頃にはもう。。。

でも本当に山と同化していく感覚というか
雨に打たれててもそれが普通のこと、
くらいに思えて楽しかったですよ♪
だけどもう一度あんな雨の中行く?と聞かれれば
さすがにもういいかな(笑)
だから一期一会の山。

最後の帽子のカットよかったですか?!
私も好きな一枚。
最後の写真はこれ、と決めていたので嬉しいです。


いつもいつも忘れずに訪ねてきてくれて
本当にありがとうございます。
本当に個人的な山の記録、だけど
そうやって読んでくださる方がいると書く張り合いが(^^)
夏山シーズンだけど今度行けるのはしばらく先…涙
また忘れないでくださいね〜(笑)