霧ヶ峰 2016 6/25 ②

急ぎ足に風が雲の手を引いて
何処かへ連れて行ってしまう。
千切れてはまた一緒になって
一瞬もその姿を留めることなく
どこへ向かうかもわからない雲をただ眺めている。
たまに見え隠れする向こうの山は何処だろう。





山頂というにはなだらかな広場みたいな
蝶々深山のその上で雲の行方を見送って
自分たちも先へ進むことにした。




雨上がりでツルっツルの登山道をわいわいと3人で下りる。
ここ滑るよー!
と先頭を歩くKちゃんは自分が安全な場所まで行くと
クルッとこちらに振り向いてカメラを構えているのだ…
決定的瞬間を撮ろうとニヤニヤしながら(笑)
しかも後ろのTさんまでも…



少し緩やかになったところで
向こうから来た四人組の女性グループに
写真撮ってもらえますか?と声をかけられた。
…失礼ですけど朝タクシーで着いた方では? と聞くと
「そうよ、私たち四国から来たのよ。
今日はコロボックルヒュッテに泊まりなの。
あんなお天気だったからヒュッテでお茶してから沢渡から来たのよ。」
それで納得。四国からならこのお天気でも歩きますよね。
「ワタシ69歳なのよ!」
と、とても元気な方たちでいつもこの四人で山を歩いているそう。
来月も北アルプスに行くのだとか…
本当に楽しそうでまさに悠々自適に
ただただ山を楽しんでいるその姿は
羨ましくもあり清々しくて、レンゲツツジのようなその後ろ姿を見送った。






そしてほどなく物見岩へ。
クライミングを楽しむTさん、
このあと悲劇に見舞われるものの…w
大事に至らなくてホントに良かった。



七島八島といわれる八島湿原が大きく見えるようになってきた。





鹿除けの策を越えると
元キャンプ場だったという奥霧小屋 の分岐に到着。
奥霧・・・・素敵な名前の小屋だけど
今は使われていないなんてとても惜しい場所。


中には入れないけれど
境界線越しに見える八島湿原の緑が
この梅雨の曇り空の下で生き生きと浮き出るように広がっている。
きれいだね。





小学生の時にこの辺には来ていた。
茅野の山の上に学校の山の家「一宇荘」があり
四年生から六年生まで毎年来るのが恒例だったからだ。
確か六年生の時には蓼科山に登っているが
この辺を歩いたのが何年生の時かはよく覚えてはいない。
代わりに浮かんできたのが「一宇荘の歌」。

♪茅野の町並み 見渡して
続く峰々 八ヶ岳
白樺林につつまれた
仲良しぼくらの一宇荘♪
…二番もある。
♪ 霧ヶ峰から蓼科へ
続くはるかな高原に
みんな集いて手をつなぐ
仲良しぼくらの一宇荘♪
忘れずによく覚えていたなと
ひとり頭の中ではエンドレスに流れるその歌。



林道はやがて沢渡につき
十字路を直進して車山肩へと最後の登りの道になる。



今日歩いた中で一番きつい登りだよね~
と3人で笑いながら歩き
さすがに息は上がらなかったけれど振り向けば歩いてきた穏やかなその曲線が目に入り
もう目の前にはコロボックルヒュッテもみえてきていた。



電流線の策の中には
これから咲く季節を待ちわびる
日光黄菅の群落があって
空に向かって伸ばす蕾たちの姿が健気に見えた。
あそこ、咲いてるよー!
Kちゃんの声に目をやると
奥の方に気の早い子たちが咲いている一角があった。
日光黄菅まで見れちゃったね♪


あのガスの朝からは想像もつかない景色と
最後の最後で思いがけないご褒美までもらったような気分でヒュッテへ。
もう2時半を過ぎている。お腹すいたね~…

もちろんボルシチを。
空きっ腹に温かいボルシチとふかふかのパン。
満たされる感じにふっと気持ちが軽くなる。
今日もしあわせだ。

そして山頂デザートは
やっぱりクリームが欲しい…と平標でKちゃんに言われたので
フルーツクリームあんみつに。


自分へのお土産は
コロボックルヒュッテを創設した手塚宗求さんの「諸国名峰恋慕」を。
この小屋を作った方がどんな思いで山と向き合ってきたのか
ゆっくり読ませていただこう。・・・なんていっても「恋慕」だもの。

食べ終わって一息ついて外を見ると
また真っ白な霧のカーテンが下りてきて
みるみるテラスを濡らす雨まで降ってきた。
すごいね、私たち。
3人で顔を見合わせて
笑いながらコロボックルヒュッテをあとにして
また朝と同じ真っ白なガスの中を駐車場へ向かった。
( おわり )
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