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妙義山・霧積 鼻曲山  2017 5/13・14  ④

 02,2017 22:48






  かあさん あれは好きな帽子でしたよ













































本当は
金湯館で作ってもらったおにぎり弁当を
鼻曲山で食べたかったけれど
まったくお天気が回復する気配もなくこのまま進むのも…
ということで標高1312メートル地点で撤退。

この先はいつか、晴れた日に山頂までまた来ましょう、きっと。





山頂が踏みたかったとか
山頂まで行けなくて残念とか
そんな気持ちはまったくなくて
この、霧に包まれた山にいられただけで
ここまで歩けただけでも充分満たされて
さらに深くなる霧の中を帰路についた。

























登山口から駐車場までは
確かにけっこうな急坂。









































ちょうどお昼時。


鼻曲山で食べられなかった
金湯館名物のおにぎり弁当を
広い駐車場の端でひろげて最後まで霧積温泉を楽しむことに。










作家森村誠一が学生の頃に霧積温泉を訪れて
鼻曲山に登り食べたというこのおにぎり弁当。
その包みに印刷された西条八十の詩「帽子」を読んだことが印象に残って
後年執筆された『人間の証明』は映画になり大ヒットした。


「母さん 僕のあの帽子 どうしたでせうね?
ええ 夏碓氷から霧積へ行くみちで
谿底へ落としたあの麦わら帽子ですよ…」


子供の自分でも記憶にあるフレーズだった。


その当時の包みをそのまま使っているという…
お弁当の包みひとつがこれほど感慨深いものとは
げんこつよりも大きなおにぎりを頬張りながら
しみじみ眺め、もぐもぐと噛みしめたお弁当だった。







霧積から碓氷へと。
















風に吹かれても
帽子は落とさなかった。







そして峠を越えて
鬼押ハイウェイから小浅間山を目指すも
こちらも今日はご機嫌ナナメか雲の中。


そんな日もあるよね。

鬼押し出しのゴツゴツの岩を眺めながら
珈琲と甘い物で気を取り直して。





そして旅の終わりは
昨日
土砂降りの雨でまったく姿を見せなかった妙義山。





晴れていればあそこまで、というはずの「大」の字もはっきりと





それでも車を走らせて奥まで行けば
山頂付近は雲の中。

中国の山水画のような幽玄な景色に
青空の下で見るよりも風情があるかな、と
最後まで青空の見えなかったこの二日間の山旅の終わり
残念な気持ちもないといえば嘘になるけど
こんな山旅もそうそうできるわけではないから。





















きっとこの先
霧に包まれると霧積を思い出し
新緑の若緑に包まれた山の気配と空気を思い出すんだろう。


この山旅で何度も目にした 「ぼくの帽子」 の
最後の雪に埋もれたであろう帽子を想う描写のせつなさと一緒に。




   ぼくの帽子       西條 八十


    ―母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね? 
      ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、 
      谿底へ落したあの麦稈帽子ですよ。

    ―母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
      僕はあの時、ずいぶんくやしかつた、
      だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。―

    ―母さん、あのとき、向から若い薬売が来ましたつけね。
      紺の脚絆に手甲をした。―
      そして拾はうとして、ずいぶん骨折つてくれましたつけね。
      けれど、たうとう駄目だつた、
      なにしろ深い谿で、それに草が
      背たけぐらゐ伸びてゐたんですもの。

   ―母さん、ほんとにあの帽子、どうなつたでせう?
      あのとき傍に咲いてゐた、車百合の花は
      もうとうに、枯れちやつたでせうね。そして
      秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
      あの帽子の下で、毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

   ―母さん、そして、きつと今頃は、―今夜あたりは、
      あの谿間に、静かに雪が降りつもつてゐるでせう、
      昔、つやつやひかつた、あの以太利麦の帽子と、
      その裏に僕が書いた
      Y・Sといふ頭文字を
      埋めるやうに、静かに、寂しく。





    (  おわり  )






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